ウフィツィ美術館
さて、やってきました「カラヴァッジョ編」
これまでは、ウフィツィ美術館にある作品をご紹介してきましたが、彼の作品だけは美術館にとどまらず、今回の旅行で見てきたものを、まとめてご紹介したいと思います。
それだけ大好きな画家なんです。日本では一般的に知名度はあまり高くありませんが、ヨーロッパでは絶大です!
イタリアの通貨がリラの時の最高紙幣の絵柄にもなった人ですよ!
天才以外の何物でもありません。それでは行ってみましょう!

まずは「イサクの犠牲」1601年頃
人類の始祖であるアブラハムは我が子をイサクと名づけ可愛がって育てていましたが、あるとき神から、その子を犠牲として差し出すようにとの命を受けました。アブラハムはイサクを神の命じた場所に連れて行き、そこでイサクの首をナイフで切り落とそうとしたところに天使が現れ「お前の信仰は確かめられたから、もうイサク殺さなくともよい」と神の言葉を伝えた。とされるシーンです。
どうですこの緊迫感。三者の差し迫った緊張感が伝わってきます。

続きまして「バッカス」1596年頃
バッカスとはローマ神話におけるワイン、豊穣、祝祭の神のことです。
なんとも艶めかしいこの少年。開けた衣服のひもを弄びながら、ワインの入ったゴブレットを差し出し、私たちを誘っているようにも見えます。
この作品を見ると、カラヴァッジョは少年にも興味があったのだろうと感じてしまいます。
また果物はフレッシュなものから腐ったものまで描かれており、生命のはかなさも表現しています。
この果物やガラス製品の透けた感じなど質感の表現は素晴らしいの一言です。

「メデゥーサ」1597年-1598年頃
これは円形の盾の表面に描かれています。
メデューサは元々美しい女性だったのですが、ポセイドンとアテナの神殿で恋に落ちたことが女神アテナの怒りを買い、髪は蛇に変えられ、彼女の顔を見た者が石に変わるようにされてしました。
英雄ペルセウスは、メデューサの姿を見ることなく彼女を倒すため、アテナから鏡のように反射する盾を受け取り、それを使って彼女を見つけ、メデューサの首を切り落としました。
この作品はカラヴァッジョ自身の肖像画と言われています。
ベルベリーニ国立絵画館

つづきまして、ローマのバルベリーニ国立絵画館です。
ここはイタリアのルネサンスおよびバロック絵画の傑作が展示されています。
今回、同じくローマのボルケーゼ美術館にも行きたかったのですが、予約がいっぱいで入館できませんでした(涙)
次回は必ず訪問しようと心に決めたのでした。

「ナルキッソス」 1597-1599年頃
ナルキッソスは、美と魅力を持つ青年で、非常に多くの人々から愛されていました。森の妖精エコーもナルキッソスに恋をしますが、彼から冷たく拒絶されます。エコーは失恋の悲しみで次第にやせ細り、ついには声だけが残る存在となってしまいました。ナルキッソスの無慈悲な態度に怒った神々は彼に自分自身しか愛せない罰を与えます。ある日、ナルキッソスが泉の水面に映る自分の姿を見て、その美しさに恋をしてしまいました。しかし、自分自身を手に入れることはできず、失意の中でやがて命を落としてしまいます。彼が亡くなった場所には美しい花が咲き、これが「スイセン(ナルシサス)」と呼ばれるようになったそうです。
自己愛が強いナルシストの語源はここからきているのですね。

「聖フランチェスコ」1602-1606年頃
髑髏を持って死について瞑想する聖人の姿を描いています。
実はカラヴァッジョは素行が悪く、酒場に行っては乱闘騒ぎを起こし何度も拘置所に送られています。
またローマでは乱闘を起こした際に人を殺めてしまい、懸賞金を掛けれてしまいます。そこからカラバッジョはローマからの逃亡を余儀なくされました。
この作品は、その逃亡先で描かれたのではないかと言われています。
気性が荒く、数多くの問題を引き起こし、人を殺めているのに拘わらず、最高紙幣の絵柄に選ばれるなんて、イタリアってすごい国です。

「ユディトとホロフェルネス」
1599年頃
アッシリア軍を率いる将軍ホロフェルネスは圧倒的な軍事力でユダヤ人の都市を征服してゆきました。そのようななか信仰深いユディトは降伏する素振り見せ彼に近づき誘惑します。ユディトは彼が酔いつぶれたところを見計らって首を斬ります。これによりユディットは自分の民を救う英雄となったのです。
何とも生々しい作品です。カラヴァッジョは斬首する作品を数多く描いています。
ローマの教会
ここまでは美術館所蔵の作品を見てきましたが、ここからが本題です!
カラヴァッジョの偉大な作品はローマの教会が所有しています。ここでは2つの教会からご紹介します。
まずは、サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会 天井の装飾まで美しいですね。


そして、これが彼の代表作の一つ「聖マタイ三部作」です。
この作品はローマ中の評判となり、彼を一躍スターダムに押し上げただけでなく、バロック美術への扉を開いたとも言われています! 歴史的名作ですね。


まずは中央から
「聖マタイと天使」1602年
絵画の中心には聖マタイが座り、福音書を書いている様子が描かれています。彼のそばに天使が寄り添い、指を指して彼に何かを示しています。この天使は神のメッセージを伝える存在として描かれ、マタイに神聖なインスピレーションを与えています。
実はこの作品に先立ち、第1作を完成させましたが、教会側から拒否されています。また残念ながら先の大戦直後に消失してしまいました。
本作品は第1作を糧にを完成させています。

「聖マタイの召命」1599-1600年
イエスは収税所に座っているのマタイを見て「わたしについて来なさい」と言われた。すると彼は立ち上がってイエスに従った。というマタイの召命もとに描かれています。
窓から差し込む光が登場人物にスポットを当てています。
しかしこの作品では、誰がマタイなのか定かになっておらず、髭を生やした男なのか、お金を数えている若者なのか意見が分かれているようです。

「聖マタイの殉教」1599-1600年
教会で説教をしていたマタイに対し、王の刺客が現れ襲い掛かっているシーンです。
登場人物の肉体美と光と闇を巧みに操り、ドラマティックな表現となっています。このあたりが流石カラヴァッジョです。
実はこの中央の若者の背後にカラヴァッジョ自身の自画像が描かれています。はたしてこれは何を意味しているのでしょうか?
最後にサンタゴスティーノ教会です。こちらにも名作があります。



「ロレートの聖母」1604-1606年頃
この作品は、ロレートの聖家に巡礼に来た親子の前に、聖母が降り立った情景をとらえています。
聖母は幼子イエスを抱き裸足で立っており、巡礼者の衣服や足の裏は汚れています。
この作品が公開されたとき、聖母があまりにも日常的であるため賛否両論を巻き起こしたそうですが、巡礼者にとっては信仰と神聖性をより身近に感じたのではないのでしょうか。
私も大好きな作品です。
こういった作品の数々は多くの画家に影響を与え、彼らをカラバジェスティ (Caravaggisti) と呼ぶことがあります。
イタリア紀行シリーズはコチラ
/イタリア紀行-①/
/イタリア紀行-②/
/イタリア紀行-③/
/イタリア紀行-④-カラヴァッジョ-編/
/イタリア紀行-⑤/