~ 投資すべき優先順位 ~
投資すべきアイテムの順位
ここまで クラシックスタイルについて記述してきましたが、それぞれのアイテムに投資すべき順番があるように思います。今回はその事について整理してみしてみましょう。
まず 基本的な考え方です。
・トレンドに流されず、長く通用するスタイルを選ぶ
・できる範囲で上質なアイテムを選び、メンテナンスを行いながら長く愛用する。
・ブランドのロゴ、ネームバリューより、品質本位で選ぶ
・今ある物を活用し、自分が納得できるものを徐々に増やす
以上を踏まえて投資すべき順番を整理してみると
靴 ⇒ ネクタイ ⇒ スーツ ⇒ 鞄 ⇒ 腕時計 の順番になります。
どうでしょう。皆さんがイメージしていらっしゃのと逆ではありませんか?
よくあるパターンとして、
腕時計 ⇒ 鞄 ⇒ スーツ ⇒ ネクタイ ⇒ 靴 ですね。
なぜこうなるかというと、人目に付く順番だからです。そうです。人に気づいて欲しいのです。しかもブランド志向の傾向が色濃く出ます。
しかし それでは 個々のアイテムが先行してしまい、トータルバランスが崩れてしまうのです。それに コストパフォーマンス も決して良いとは言えません。
少し高額になりますが、例え話として聞いてください。
1足10万円の靴は 上質で良くできた靴です。そして 20~30万円になると、それは 最上級の部類です。
一方 10~30万円の時計は、時計好きの間では入門編です。皆がうなる腕時計は100~数千万円です。
どうです。アイテムは違えど、同じ程度のクオリティを目指すにあたり、かかる費用が全く違うのです。
同じ30万円で味わえる世界観、質感の差は、どちらが魅力的でしょうか?
確かに 30万円の腕時計は買えるチャンスがあるかもしれませんが、30万円の靴を買うには かなり勇気がいるでしょう。それに私自身も腕時計は大好きです。しかし 効率的かつ バランス良く進めていくには、靴の方が優先順位が高くなるのです。それに 上質な靴を履いていると、スーツなどの身に付けている物も立派に見えます。その一方で、かかとのすり減った傷だらけの靴を履いていると、スーツのみならず、その人の魅力まで半減してしまいます。
また 薄いペラペラのネクタイでは、高価なスーツも見劣りしてしまいます。
腕時計に関しては宝飾の要素が強いように思います。クラシックスタイルでは、そこはあまり重要視されておりません。300万円の時計を身に付けた人が、2万円の つま先が長く尖った靴を履いていたら、バランスが悪いですよね。
これは ものすごく極端な例え話をしていますが、クラシック スタイルを理解した人であれば、この考え方には納得して頂けると思います。
また鞄については、ブランドのロゴなどが付かず、シンプルで上質な製品を選んだ方が好感が持てます。それらをお手入れしながら、長く愛用して欲しいと思っています。
現実的な金額の目安は?
これまで いろいろ記事を読む中で、一式揃えるのに、いくら掛かるのか気になりますよね。私が若い後輩から「クラシックスタイルを始めたいが できるだけ出費を抑えたい。その際の目安となる金額はどの程度か」と尋ねられたと仮定し、その場合の回答を記載してみたいと思います。また これらのアイテムに関しては、靴や鞄、時計など実際に使用できてない部分もあり、あくまでも見た感じで良さそうなものを選んでいますでご了承ください。
ここは非常に難しく賛否両論もあると思いますが、これらはあくまでも目安ですし、自分の身の丈に合った服を選ぶのが正解と思います。最終的なご判断はご自身でお願い致します。(ここ10年以上 購入していないアイテムもあり、金額の判断は非常に難しい)
アイテム | 目安金額 | |
靴 | 3万5千円~ | Jalan Sriwijaya(ジャランスリワヤ)、Berwick(バーウィック) など |
ネクタイ | 1万円前後 | ジャガード織り、レップ織り厚手のシルク 小紋、ドット(水玉)柄 |
スーツ | 10万円~ | 縫製工場により、価格の差が大きい(らしい) |
ベルト | 1万円前後 | 黒、茶 を準備するのが望ましい。 |
シャツ | 8千円~ | 白、淡いブルーの無地またはストライプ柄 |
靴下 | 1.5千円~ | 秋冬:ウール素材、 春:コットン素材 黒と紺 |
鞄 | 数万円~ | 総本革 または 本革とキャンバス、ナイロンとのコンビも有り? |
腕時計 | 3万円~ | ORIENT Bambino など、これで十分! |
上記の価格からスタートになるでしょう。上を目指すとキリはありません。これはあくまでも、私の身の回りでの感覚であり、私が知らない もっとコストパフォーマンスが高い商品があるかもしません。そこはご了承ください。
また いきなり全てを揃えるのは難しいでしょうから、優先順位の高いものから、自分で納得できるものを、少しづつ揃えていくのが良いと思われます。ローマは1日にしてならず、服も1日にしてなりません。
それでは 全てのアイテムではありませんが、少し解説を加えたいと思います。
靴
クラシックスタイルにおいて、靴が初めに投資すべき順番であることは説明してきました。
そこでは 10万とか30万円の話をしましたが、3万円台でも クオリティが高い製品も存在します。
それは Jalan Sriwijaya(ジャラン スリワヤ) です。
インドネシアのブランドですが、靴の聖地イギリスのノーザンプトンで修行を積み、フランスにおいても皮革の生産を学んだ後 2003年に創業しました。
また インドネシアは輸入関税も低いことから、高品質でありながら、低価格での提供を実現できているようです。
先日、信頼おける靴の修理店に行き、本ブランドの出来について尋ねてみました。
「厳密に言うと【ハンドソーンウェルテッド製法】と言い難い面もあるが、コストパフォーマンスは間違いなく高い!」とおっしゃっていました。
スーツ
実はスーツの価格はとても難しいのです。それは何故かというと、消費者では判別が難しい縫製の差が価格の差に繋がるからです。
よく「当店はインポートの生地で オーダーしても 〇万円です。」と説明を受けることがあります。確かに 違うお店では 同じような生地でオーダーした場合、少し高かったような気がする。。。店舗によって価格はまちまちです。
ある人から聞いた話によると、各販売店と提携している縫製工場には品質(技術)の差があり、当然 高品質の工場で作られるスーツは高額になるとのことでした。またスーツ全体に占める生地の価格の割合が少ないと。
また一つの店舗の中でも、「スタンダードライン」と「プレステージライン」が存在し、同一の生地を使用しても価格に差が表れます。つまりそれが 縫製の差、細かいディテールの指定の可否 ひいては 「着心地」「美しい仕上がり」に繋がってくるのでしょう。
縫製工場の違いによる縫製の差は、どんなところに表れるのか店員の方に尋ねたところ【 肩から首にかけて「のぼり」の吸い付きが違う 】とおっしゃってました。
ここは料理にも繋がるかもしれませんね。同じ食材を一流の料理人が作るか、私達が作るか。同じ料理名は作れるかもしれないが、美味しさはの差は歴然。そんな感じだと思います。
おなたは一流の食材を一般人が作った料理と、スーパーの食材を一流料理人が作った料理、どちらを選びますか?私なら後者を選びます。
それとオーダーの際は採寸する店員さん(フィッター)との相性もあります。ここは知識や嗜好、コミュニケーションなど、さまざまな相性が関係してきますので、なんとも表現が難しいところです。
また会社(店舗)によって販売戦略に沿った価格設定もあるでしょうから、消費者である私達が、スーツの価値を価格で判断するのは とても難しいことだと思います。
腕時計
皆さんの興味が最も高い腕時計です。高価な時計は美しいです。私も大好きで それなりの腕時計を数本所有しています。しかし スーツスタイルにとって、腕時計はさほど大きなウエイトを占めません。
まずは スーツスタイルに合う腕時計の定義をおさらいします。
・シンプルなデザインでアナログ時計が望ましい
・袖口に収まる薄型の時計であること
・革ベルトの方がスーツにマッチしやすい
・それほど高価である必要はない
これはあくまでも、スーツスタイルの際の理想を記述しています。
正確性を追求すれば、電波時計には敵わないでしょうし、機能性を追求すればアップルウォッチには敵いません。
またメタルのブレスレッドの方が、ベルトも傷まないし扱いやすいといったメリットがあります。
しかしここはあくまでも、エレガントにスーツを着こなす場合の設定なのです。
利便性は一旦脇に置くことになります。
また大型で装飾が施されたもの、多機能な機械式時計などは、腕時計単体としてはとても魅力的ですが、よりフォーマルなシーンでの着用にはマッチしていないかもしれません。
そういった腕時計は、ややカジュアル感を出したジャケット・パンツスタイルの際に楽しんではいかがでしょうか。
話は少し逸れますが、日本でも有数の時計店の社長さんがおっしゃった言葉です。「ロレックスは1年のうち、360日は賄える」これはどういう意味かというと、ロレックスは丈夫で精度も高く、ステイタスもある。よって1年の大部分は賄える。しかし残り5日のフォーマルなシーンでは、別の時計が必要になる。と言うことです。
私も夏場は割り切って、ロレックスのようなブレスタイプの腕時計を着用します。それが楽だし、製品も傷みにくいからです。着用シーンをイメージ、時には割り切って、身に付ける腕時計を選ばれると良いと思います。
画像引用:オリエント公式オンラインストア
Orient Bambino38 RN-AP0105Y
話は長くなりましたが、上記の条件を持ち合わせた腕時計があります。「ORIENT Bambino」 です。リーズナブルですが、シンプルで主張しずぎず、スーツスタイルにマッチすると思います。私個人としては、ゴージャスは時計を着用している人より、堅実で好感が持てます。
また このシリーズはカラーやデザインが豊富に設定されています。また国内向けはケース径38mm 海外モデルは40mmが設定されており、大半の方は38mmが良いと思いますが、外国人並みに身体が大きい人は40mmでも良いかもしれません。
これは「腕時計のある生活」でも紹介されていました。(9分15秒~)
機械式の自動巻きで、実売価格3万円台。
とても良くできていると思います。
今回は各アイテムの揃える順番と、それに必要な金額について触れてみました。どんなジャンルでも同じですが、上をみるとキリがありません。自分の身の丈に合った効果的な投資を行いながら、少しづつ楽しみを増やしていきましょう。
「クラシックスタイル入門」シリーズはコチラ
スーツの着こなし① 意識で印象が変わる
スーツの着こなし② 美しく見えるポイント
スーツの着こなし③ アイテムの選び方
スーツの着こなし④ ディテールを知る
スーツの着こなし⑤ 投資すべき優先順位
スーツの着こなし⑥ 上手なつきあい方