はじめに
この記事では、コードバンの水ぶくれの補修方法について記載しています。その補修に3日程掛かりましたが、満足のゆく結果が得られましたので、ご紹介したいと思います。
これまで3年ほど、水染めコードバンの長財布「ココマイスター・ハイフライヤー」を使用してきましたが、傷や水ぶくれが多く発生してしまいました。しかし 財布全体が傷んだのではなく、「表革のみ」傷んでいるのです。
そこで、この状態をどうにかできないかと考え、いろいろ調べた結果、自分で補修にチャレンジすることにしました!
特に水染めコードバンを使用している人、また、これから購入しようとしている人には、参考になるのではないのでしょうか。 購入経緯についてはコチラ ⇒ 「ココマイスター・ハイフライヤーの経年変化」
購入 ~ 現在の状況
水染めコードバンの表情が美しい ココマイスター「ハイフライヤー」
水染めコードバン特有の透明感が感じられ実に美しいです ✨
また縫製の質や裁断面にニスを塗った「コバ塗り」からも完成度の高さを感じさませます。
しかし 3年間使用していると、こんな感じになってしまいました。
表革は、とても残念な状態になっています。傷や水ぶくれが多く発生しています。無念です。
こうなった原因は、自分の汗を吸ったり、手洗いの後濡れた手で触ったことが原因と考えられます。


下は内装の写真です。こちらは想定通りのエイジングが進んで、良い味を醸し出しております。



クリームを塗り、頑張って磨いてみましたが、限界があったようです。
傷や水ぶくれは解消されませんでした。残念。。。
そこで ココマイスターさんい修理の依頼をしてみました。丁寧にご回答を頂きましたが、対応はできかねるとのこと。
地元の革修理のお店に依頼するか検討もしましたが、まずは自分で できる事は やってみようという結論に達しました。
水ぶくれの補修

改めて見てみましょう。
傷と水ぶくれの拡大図です。
結構ひどいですね。
しかしどうしても綺麗な状態に戻したいです。
それでWebで「コードバン 水ぶくれ 補修」で検索
してみたところ、国内有数のコードバンの生産者
「LEDER OGAWA」(レーデル オガワ)さんの動画に辿りつきました。
その動画を拝見すると、コードバンの性質や水ぶくれの原理、また その補修方法を教えて下さっています。
< コードバン 水ぶくれの原理 >(繊維の寝ている割合:%)
① 皮革完成直後はコードバン繊維が完全に寝ている(100%)
② 製品の完成時は着色等により若干繊維が立つ(80%)
② 使っていくうちに繊維が立ってくる(60%)
③ 水に濡れると繊維が完全に立つ(0%)
④ 乾かした後にケア & 経年使用で再び寝てくる(30%~40%)
コードバンが水に濡れることで繊維が立ち、そうでない箇所との差が「水ぶくれ」として表れてるのですね。
その補修方法としては、一旦 全体を濡らし、水ぶくれ と そうでない箇所を均一の状態にした後に、ケアをするとのことでした。その原理を踏まえた上で、補修を行うとすると
< 水ぶくれの補修の手順 >
① 水ぶくれした表革全体に少し多めのワックス(クリーム)を塗る
② 濡れたキッチンペーパーを表革に乗せ、全体をまんべんなく濡らす
③ 全体がまんべんなく濡れることにより表革が均一の状態に近づく
④ キッチンペーパーを外し、2日間 乾燥させる
⑤ ワックスを塗布し、繊維を寝せるように強く磨く
なるほど、水ぶくれの原理と補修の手順は分かりました。それでは早速やってみましょう。
手順① ワックスの塗布 と ② キッチンペーパーにより表革を濡らす

手順①:表革全体に少し多めのワックス(クリーム)を塗った後
手順②:濡らしたキッチンペーパーを表革に乗せた状態です。
(キッチンペーパーはもともと褐色です。)
結構濡れているでしょう。時々 表革の状態を見ながら、水が全体に浸透し、傷や水ぶくれが目立たないようになっているか確認しました。
また 時間が経つとキッチンペーパーも乾いてきますので、霧吹きで水を追加しながら、表革に水分が浸透するのを待つことにしました。
レーデルオガワさんの動画では、財布をどっぷり水に浸けてケアしているバージョンもありましたよ!
手順③ 表革の状態の均一化
様子を見ながら時折 霧吹きで水分を追加し、約6時間経過しました。
表革が水分を含み、繊維が完全に立っている状態ですね。
大きな傷は少し残っていますが、小さな傷や水ぶくれはほとんど目立たなくなっているではありませんか!


うまくいきました!
濡れた状態ですので色は濃く見えますが、補修前は 20~30点位だった見た目が 70点位まで復活しました!!
後はシミなどが残らず、型崩れのないまま 乾いてくれることを祈ります!
手順④ 乾燥
キッチンペーパーで表革を均一に濡らした後、財布を開き、表革を上にした状態で、2日間 室内で自然乾燥させました。

乾いてきたので、色の濃淡が表れてきました。
これは「経年使用による味」としてとらえています。革製品のエイジングの楽しみですね。
しかし上の手順③補修前の写真と比べるとかなり表革の表面が整っています。一目瞭然です。
見た目ではあまり分かりませんが、表面は濡れた状態からの乾燥になりますので、水分と油分が抜けています。この後クリームを塗りましたが、その際にはカサカサと音がする部分もありました。

今回 乾燥させるのあたり、気を付けたことがあります。
それは 型崩れと今後 磨きやすくするため、約2mm程の かなり堅い厚紙を両サイドに入れた状態で乾燥させました。
別に無くても良かったのかもしれませんが、念には念を入れました。
お財布をできるだけ平ら保ち、今後の磨きの際に、この厚紙によって、力がうまく伝わると考えたからです。
手順 ⑤ 磨き
さて いよいよ磨く作業に入っていきます。今回は2日間乾燥させた後に、1度クリームを塗って数時間置いた後、2度目のクリームを塗って、さらに数時間置いてから「磨き」を行いました。
なお今回は、手持ちのコロニル「ディアマンテ」をクリーム(ワックス)として使用しております。

どうです。この光沢感 ✨
新品時に似た光沢を表現できています!!
艶が出たことで、傷がほんの少し目立つようになってきましたが、光沢感はかなり戻りました!
頑張ってみるものですね。
もし、店舗に修理に出して、この状態で戻ってきても満足していたことでしょう。
これで まだまだ愛着を持って使い続けることができそうです 😊
磨き + アルファ
今回は より高い完成度を求め、通常の「磨き」作業に加え、道具を使って さらに磨いてみることにしました。
そう より美しく「美の追求」です ✨

コレです! 水牛の角で できた「かっさ棒」です。
もともと ツボを押すための道具らしいですが、これを革のメンテナンスに使っている方も多いようです。
革のメンテナンス用に「アビィ レザースティック」と言う製品も存在しますが、約1万5千円とかなり高価です。そこで いろいろと検索したところ、「かっさ棒」で代用されている事例もあり、Amazonで検索したところ、かなり似た製品がありました。
いろいろと種類がありましたが、レビューの評価から製品が安定しているように感じましたので、本製品を購入してみました。価格は 2,400円でした。


そこで 傷防止のために再度クリームを塗り、かっさ棒の裏の平らな部分を使い、クルクルと円を描くように磨きました。
今回は繊維を押し付け寝かせることが目的ですので、傷が付かないように気をつけながら、結構強く押しながら磨きました。
また背中の部分もしっかり磨けるように、丸い筒を下に敷いて、力を入れながら慎重に作業を行いました。

どうです!! この仕上がり✨
美しさを取り戻しましたね。
写真では分かりづらいですが、かっさ棒を使ったことで、表革がフラットになりましたし、よりシャープになりました。そのおかげで キラキラした光沢感が増しました ✨✨
ここまで出来れば大満足でしょう。
正直言ってここまで復元できるとは思ってもみませんでした。
この復活した姿をココマイスターさんにお見せしたいものです(笑)
拡大してもこの状態です。左が「補修前」、右が「かっさ棒」で磨いた後です。大きな傷は少し残っていますが、随分 水ぶくれが消えているのが分かります。大成功ですね!!


おわりに
今回の「水ぶくれ」の補修を振り返って、もう少しこうすれば良かったと思うところを整理してみたいと思います。
全体を見れば、かなり上手くいきました。強いて反省すべき点があるとすれば、ほんの少しだけ、水ぶくれの跡みたいな箇所が残っており、「もう少し水を含ませれば【水ぶくれ】が完璧に消えたのか」ということです。消えたかもしれないし、今回が限界だったのかもしれません。
しかし全体を見れば、かなり良く仕上がったと感じていますし、満足しています。
皆さんも、革製品が傷ついたとしても、諦めずにメンテナンスをしてあげると、復活することが分かって頂けたと思います。今お使いのアイテムにも愛情を注ぎ、「美しさ」を保ちながら、末永く付き合っていきましょう!✨