クラシックスタイル入門 盛夏用スーツの新調

ファッション

盛夏 スーツ どうする?

ここまで 主にクラシックスタイルのスーツの着こなしについて記載してきました。そこには一定のルールや様式が存在し、それらを意識することで装いが整うことも伝えてきました。
そのうえで夏場は一旦クラシックスタイルから離れるとも提案してきました。

最近の日本の夏は35度以上の猛暑日が続き、とても上衣を着用して出かけることはできません。可能であれば清潔感を保ちながら軽装で整えることができれば理想です。

しかしながら、お仕事やイベントなどへの出席で、どうしてもスーツを着用しないといけないシーンは存在します。
実は私、講師業をスタートし人前で登壇する機会も増えてきました。
そこで今回、盛夏用のスーツを新調することにしたのです。

コンセプトを決める

スーツを新調するにあたり、何となくオーダーすることはありません。
自分がどのようなシーンで、どのように映りたいのかを意識してオーダーするのです。これらが定まっていないと満足のいく一着には到達できません。

ここで今回のコンセプトを整理します。
テーマは「暑苦しくならず、しっかりした素材感、ドライ感」です。

項 目  具 体 案
着用シーン 企業研修への登壇、イベントへの出席、オペラ鑑賞
ネイビー(暑苦しくならないよう、濃すぎないネイビーとする)
素材 通気性が良くハリがあり、ガリっとした素材感
ラペルの返し位置は高め
仕様 肩芯地なし、裏地なし

このようにスーツを新調する際には、コンセプトを明確にすることが必要なのです。これは既製服でもオーダーでも同様です。
最初は細かいところまでイメージできないと思います。そんな時は遠慮なく店員さんに相談しましょう。

オーダースーツの事を「ビスポーク」(bespoke)と表現されることがありますが、これは顧客とテーラーが会話を重ねながら「 be spoke」服を仕立てていくことに由来しています。
このように会話によって、コンセプトを共有し、納得のいく1着へ仕上げてゆくのです。

既製服であっても、是非店員さんと会話を重ね、自身のコンセプトやイメージを伝えてくださいね。

イメージの構築

コンセプトは固まりました。実は今回のオーダーを検討するにあたり、ベースとなるジャケットがありました。
そのジャケットがこちらです。

15年前にオーダーしたジャケット 現役選手です。
一番上のボタンホールが見え ラペルの返し位置は高め 
ナットボタンも経年により良い感じで変色しています。

前回はボタンを重ねず 本切羽
今は無き EDWIN WOODHOUSE
裏返し 肩芯地なし
背抜き部分 この透け感を再現したい。

いかがでしょうか。15年経過した今でもデザインの古さを感じさません。これがクラシックスタイルの良いところです。しかもハリのある素材のおかげで型崩れも無く、しっかりとキレイなシルエットを保っています。
これは作ってくれたテーラーに感謝しかありません。

この素材はウール100%の表記でしたが、モヘア混のような風合いを見せています。
モヘアとはアンゴラ山羊のことで、反発力としっかりとした生地感で、シワにもなりづらく長時間着てもパリッとした面持ちがキープされます。またシャリシャリとしたドライタッチな肌触りで、高温多湿な暑い時期に向いています。キラキラとした光沢感も特徴のひとつです。

イメージとしては、この素材感と仕様で、色を濃い過ぎないネイビーで仕立てたいと思います。

いざ テーラーへ

オーダーのイメージも固まりましたので、上記のジャケットを羽織りテーラーに出向きました。
好みを伝えるにしてもサンプルが合った方が伝えやすいですよね。
皆さんもスーツをオーダーされる際は、普段来ているスーツを着て訪問されることをおススメします。

形と仕様はほぼ固まっているので、あとは生地選びです。実はここが非常に難しいのです。
ジャケットを見せ、これと似た生地を提案してもらいました。

SMITH WOOLLENS ABACUS
ハリコシと上品さを兼ね備える
Harrisons of Edinburgh SPRING RAM
発色が素晴らしい
William Halstead Fresco
圧倒的なガリ感と清涼感

生地にはそれぞれの良さがあり、30分ほど悩みましたが、
William Halstead High Twist Fresco に決定しました!

要因としては、夏場の汗でもよれず、清涼感を保ちながら形をキープしてくれそうだからです。
色も濃紺よりワントーン明るいネイビーを選びました。
濃いと暑苦しく見えるし、室内では黒に見えてしまいます。

どうです この「透け感」
表面は滑らかさではなく、良い意味での「粗さ」があります。
したがって「のっぺり」とした表情にならず、清涼感を保ちつつ、ガリっとしたドライ感と構築美を兼ね備えております。

あとは会話を重ねながらコンセプトと仕様を伝え、詳細を詰めていきます。
もうかれこれ20年以上通っていますので、私の好みや着用シーンも良くご存じです。
しかしながらこの会話が何とも楽しいのです。皆さんもスーツを購入される際は、是非会話を楽しんでくださいね。

なお今回は、袖口のボタンは重ね、コンパクトに仕上げることにしました。
パンツはアウトのワンタック(これは好み)、裾は4.5cmのダブルです。
その他は当初決めた仕様通りです。

このテーラーではオーダーから仕上がりまで約50日ほど要します。
それだけ手間を掛けて、丁寧に仕上げるということです。
早く出来上がるから、良いという訳ではありません。

スーツ 出来上がり!

ついにスーツが出来上がってきました。もう出来上がりが待ち遠しかったこと。
お店から連絡があった日は、ちょうど近くに外出していたので、そのまま受け取りに行きました!

いかがでしょう。
キッチリとした誠実感あふれる一着に仕上がってます。
イメージ通りに仕上がり、とっても嬉しいです。

フレスコ素材と仕立ての良さで、キッチリをした印象を与えます。
襟元の上りも素晴らしい。ラペルのロール感も見事です。
フレスコの素材感 ざっくり表情が清涼感を与えます。
アウトのワンタック
本切羽で重ねボタン
個人的にはしっかりとした英国製の生地が好み

組み合わせ

スーツも新調したし、どのように組み合わせようかと考えました。
ネイビーのスーツに黒のストレートチップは王道で誠実さを表現できますが、真夏には重く見えてしまいます。
そこで スーツ、靴、ネクタイの組み合わせを考えてみました。

ストレートチップ ダークブラウン

まずは 靴 からです。
写真ではかなり濃いブラウン見えますが、実際にはもう少し明るい色です。

黒だとキッチリとした印象は表現できますが、どうしても固く重くなりがちです。

そこでブラウンにすることで、少し印象を和らげることが可能となります。

ライトブラウンですとやや足元が浮いてしまう感じがでますので、ミディアム~ダークブラウンあたりがよろしいのではないかと思います。

この靴も15年ほど 愛用しております。

フレスコ素材 ネイビー

次にネクタイです。
清涼感とスーツの素材感を考慮し、フレスコを選んでみました。

フレスコとはカラミ織と言われる生地を用いており、独特の凹凸があり、それによって軽快感や清涼感を演出することができます。

今回はネイビーを選びましたが、ブラウンなどでも良いかもしれません。
イタリア人が好むとされる アズーロ・エ・マローネ
ですね。

青(AZZURRO) と 栗(MARRONE)の配色のこと

今回ネクタイも新調しましたが、ここはかなり苦労しました。
残念ながら、このテーラーではネクタイが売り切れであり、合わせて購入することができませんでした。

以前にもお話しましたが、スーツのラペル幅とネクタイの大剣幅を合わせるのが理想と述べております。
そして私のスーツのラペル幅は9cmです。

しかしながらネクタイ幅の現在の主流は8cmであり、9cm幅の商品はほとんど存在しません。そこで店舗を歩き回ったり、Webサイトを検索しましたが、結局9cm幅のフレスコタイに巡り合うことはでず、許容範囲として 8.5cm幅の商品を購入しました。
8.0cm幅の商品は沢山ありますが、8.5cm幅の商品もこれ1本のみで、価格も2~3倍となりました(涙)

おわりに

今回は盛夏に向けたスーツの新調について綴ってみました。
個人的な見解ではありますが、そこに至るまでの検討のプロセスや根拠を示せたことは良かったと思います。
皆さまの参考になれば幸いです。

まずスーツの新調(購入)にあたり大切なことは、自分のイメージをしっかりと持つことだと思います。
スーツによって自分をどう表現したいのか、それを実現するために、どのような色や素材、仕様を選ぶのか。
これが整理できると皆さんの装いも自然と整ってきます。

そして、その想いをテーラーに的確に伝えることなのです。
ここは視覚や言語、その他ノンバーバルなコミュニケーション能力も含まれるかもしれません。
この意志疎通がとても大切なのです。

今回、ネクタイの購入のプロセスなど、どこまで自分の理想を追求するかは、人それぞれですが、厳密になりすぎると、手間と金銭的な負担がグンと跳ね上がります。何のジャンルでも同じでしょうが。。。

皆さんにも、理想と現実の狭間に悩む日々がきっと訪れるはずです(笑)

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「クラシックスタイル入門」シリーズはコチラ
 スーツの着こなし① 意識で印象が変わる
 スーツの着こなし② 美しく見えるポイント
 スーツの着こなし③ アイテムの選び方
 スーツの着こなし④ ディテールを知る
 スーツの着こなし⑤ 投資すべき優先順位
 スーツの着こなし⑥ 上手なつきあい方

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